2011.03.23

雑想 : 宮城県石巻市・渡波海岸の防波堤は津波を食い止めた? 高解像度航空写真で検証

今回の東日本大震災で津波の被害を受けた各所では、津波に備えた強固な防波堤が脆くも崩れ去ったことが報じられています。

そんな中にあって、被害が大きかった宮城県石巻市においても、渡波海岸の防波堤はその効果を発揮し、被害を最小限に食い留めたらしい、という情報を目にしました:

そこで、これが果たして真実かどうか、その検証の参考となる画像を用意してみました。

私が利用した高解像度航空写真のソースはこちら:

これは衛星写真ではなく、航空機もしくはヘリにより撮影した航空写真です。衛星写真よりも優れた解像度であり、防波堤の被害状況もよく読み取れるレベルです。

このページで配布されている航空写真は細切れ状態のため、それを私が手作業で繋ぎ合わせてみました。素人の手作業ですので、合成の品質にはやや難がある点についてはどうかご了承下さい:

宮城県石巻市 被害状況の航空写真 門脇~渡波海岸

TsunamiDamageOnIshinomaki_Med-Thumb.jpg

ダウンロード

壊滅的な被害を受けたという石巻市門脇周辺から、比較的軽微な被害で済んだという渡波海岸周辺までを収録してあります。リンク先の画像はサイズが大きいのでご注意下さい。携帯端末等での閲覧は無理があります。

下記のコメントは、私の主観的な印象によるものです。私には写真から状況を客観的に読み取るための専門知識はありませんので、その点については何卒ご了承下さい。

渡波海岸 渡波中学校付近

crop-watanoha-jh.jpg

渡波海岸・渡波中学校付近をフル解像度切り抜き。一見は、防波堤は崩れ去っているように見えます。しかし、防波堤のすぐ北の部分の影はそれなりに濃く、おそらくは崩れ去ったのは上部半分程度のみ、でしょうか。渡波中学校では2階部分まで浸水したらしいです。

Google ストリートビューで見る限りでは、堤防の高さは4mぐらいでしょうか? 10mは無さそうです。堤防の背後の防潮林は密度も濃くかなりのものですね。

渡波海岸 砂浜の東側の住宅地沿岸

crop-watanoha-2.jpg

渡波海岸・砂浜の東側の住宅地沿岸をフル解像度切り抜き。こちらは、堤防の損傷は軽微に見えます。しかし、海岸沿いの住宅には甚大な被害があるようです。

ここも、Google ストリートビューで見る限り、堤防の高さは4mぐらいでしょうか?

しかし、この周辺では、被害が大きかったのは沿岸部に留まっており、やや内陸に入ると比較的軽微な被害に留まっているように見えます。

渡波小学校付近

crop-watanoha-es.jpg

渡波小学校付近。前記の砂浜の東側の堤防のやや内陸、堤防からは600mぐらいの距離にあります。この東側には海跡湖である万石浦に繋がる川状の水面があり、そこからは500~600mぐらいの距離です。この渡波小学校の浸水は1m程度? (冒頭のブログより) だった模様。

湊中学校付近

crop-minato-jh.jpg

こちらは渡波の西隣の湊にある湊中学校付近。南にある石巻漁港の内側の岸壁から約700m、西にある旧北上川からは700~800mぐらいの距離でしょうか。やや内陸にあるにも関わらず、甚大な被害が見て取れます。

この湊中学校では、3階まで浸水した (冒頭のブログより) という話です。南の石巻漁港にはそれなりの防波堤が備わっているように見えますが、西側の川からの浸水が大きかったのかもしれません。

門脇

crop-kadowaki.jpg

被害が大きかったという門脇。湊から西へ行き、旧北上川河口の西側です。北側の高台は無事であるものの、平地は壊滅状態です。

まとめ

宮城県石巻市門脇から渡波海岸にかけての津波による被害状況をざっと見てみましたが、私個人の感想としては、冒頭で紹介したブログで紹介されている通りの状況と考えても矛盾は無く、税金の無駄と叩かれながらも築いた、渡波海岸の強固な防波堤&その沖合いのテトラポッドによる消波が被害を大幅に軽減することに成功した、というのは事実のように思います。(4/4(月)追記: 人工的な津波対策とはまた別に、地形的な要因も大きいかもしれませんので、断定はできません。)

なお、沖合にある(?)という消波テトラ帯は、残念ながら今のところその姿が確認できる画像は発見できていません。

ただ、この渡波海岸においても、堤防の損壊は小さくないレベルです。それでもなお、被害の軽減には繋がったのでしょう。

他の各所での崩壊した防波堤も、きっと、崩壊してもなお、被害の軽減には役に立っていたのかもしれません。崩壊したから無力だった、と安易に断じるのではなく、今後の専門家による客観的な分析が望まれるでしょう。

4/3(日) 追記

崩壊した堤防もやはり効果があった模様。

4/18(月) 追記

崩壊した防波堤も決して無意味ではなく、被害軽減に役立ったはず。しかしその一方で、強固な防波堤への過信が犠牲者の増加をも招いた。命を守る防災のためには想定に縛られない対応が大切、という話。

さらに広域の高解像度航空写真: 航空自衛隊 松島基地~渡波海岸

TsunamiDamageOnIshinomaki-Thumb.jpg

より広域で見てみると、この周辺では、渡波海岸周辺だけが目立って被害が小さいことがよりはっきりわかるように思います。

ダウンロード

フル解像度版は非常識な画像サイズですのでご注意下さい。展開後は、27,467 x 13,134 x 3 bytes = 約1GB ものメモリを消費します。閲覧には、最低でも 2GB のRAMを搭載したPCと、高解像度画像に対応した画像閲覧ソフトが必要です。

中解像度版、低解像度版についてもサイズは大き目ですので、携帯端末等での閲覧は無理があります。

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コメント(2)

生態学を学んでいる学生です。
記憶が少し曖昧ですが、スマトラ地震についての研究で、マングローブ林などの植生帯の存在が津波被害を軽減させたという発表を見たことがあります(数年前の生態学会だったと思います)。

渡波海岸でも、ご指摘のように海岸と宅地の間に数十m幅の植生帯(クロマツ林でしょうか)がありますよね。クロマツとマングローブでは物理的構造が違うので一概には言えませんが、防波堤とあわせ、この林の存在が被害軽減にある程度貢献したのではないかと読み取れるようにも思います。

その通りでしょう。本文にも記載してあるとおり、
この手の林は『防潮林』と呼ばれるそうです。
防潮林の解説:
http://www.ffpri.affrc.go.jp/shoho/n33-03/033-3.htm