2012.05.06

エンターテインメント : アニメ「Aチャンネル」レビュー & AMV/MAD ~めぐる季節~

アニメ「Aチャンネル」、先日アニマックスにて全12話一挙放送があったので見ることができました。評価が高いというのは聞いていましたが、季節感ある映像が素晴らしく、評判通りの良作でした。勢い余ってAMV/MADなど編集してみたり。

Aチャンネルとは

「Aチャンネル」は、黒田bb先生による4コマ漫画であり、それを原作とする全12話+OVA1巻のアニメ (※私はOVAは未見) です。内容としては、るん、トオル、ユー子、ナギという4人の女子高生たちの学園生活を描いたほのぼの日常アニメです。中でも中心となるのが、るん、トオルの2人で、特にトオル視点の物語という側面が強いですね。

原作漫画は現段階では3巻まで発売されており、今も連載が続いていますが、アニメの原作となったのは、そのうち1~2巻だけ。しかも2巻は全体が使われているわけではなく、その2/3程度しか使われていません。

原作はいわゆる磯野時空もの。4コマ漫画は一般的に刊行ペースが遅いのです。Aチャンネルの場合は、1話6ページの月刊連載で、単行本1冊を出すのには多少の描きおろしを加えても約15ヶ月分の連載が必要になります。よって2冊出すのに約2年半かかっています。そして、4コマ漫画誌においてはその号が発売される季節に合わせたお話を描くのが一般的であり、Aチャンネルもその方向ですので、作中の季節は2巡しており、しかし登場人物たちの学年は変わらず、という。ただし、1巡目と2巡目で同じイベントを題材にしたエピソードは無く (例えばバレンタインのエピソードは1回だけ)、よって1巡内での物語とも解釈し得るようになっています。

ちなみに、2巻の終盤からはそれまで1話あたり6ページだったのが8ページに増ページされており、それに伴い内容もより充実。1~2巻もよくまとまってますが、3巻も完成度高し、です。

アニメ版では、この漫画版の季節の2巡を1巡に再構成し、原作の内容をほぼ忠実に再現しつつ、若干の行間を補足して全12話にまとめています。各話に必ず1曲づつ、ストーリーに合わせた挿入歌が用意されていて、その部分はミュージックビデオ的な作りになっています。

物語は新春、志望の高校に合格したトオルが、久々にるんちゃんの家に遊びに行く場面に起点を置いています。すると、そこに居たのは大好きなるんちゃんだけではなく、その友達のユー子とナギも遊びに来ていました、というのがお話の出発点。

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左から、るん、トオル、ナギ、ユー子。この4人の主要登場人物たちの中で、トオルだけが1学年下という設定です。トオルとるんちゃんは小学生時代に出会って、以後ずっと大の仲良し。るんちゃんが大好きで、ずっと一緒に居たいと願うトオルは、高校もるんちゃんと同じ高校を選択しました。

トオルは、あまり人付き合いが得意ではない子だったようです。直接的には描写されませんが、これまでずっとるんちゃんにべったりで、その他には仲の良い友達は多くなかった、ということが折々で示唆されます。

そのトオルが高校に進学して、るんちゃんの友達のユー子やナギ、そして同級生のユタカやミホと出会って、最初はぎこちなくても、だんだん馴染んでいく、というトオルの成長の物語が、このAチャンネルのテーマ性です。

そしてそこで描かれるのは、ひたすらに日常のほのぼのとした光景なんです。何一つ、特殊な設定や特別な悩みというのはありません。どこまでも普通なのがAチャンネルの世界なんです。

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これは第8話「新学期 Abnormal circumstance」より。夏休みを終えて、久々に会ったクラスメイトとのひとコマ。当初は馴れ馴れしくされて困っていたトオルだけど、今はこうやって笑顔も見せる。トオルの成長を示すシーンですね。

この第8話の前半では、新学期を迎えて、これまでと同じ、でも少しだけ変わっていく日常の空気感が巧みに描かれています。一方の後半はちょっとしんみりムード。背景美術が綺麗すぎて、挿入歌の使い方も素晴らしいです。

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雲がどこかにふわり飛んでいく
それをここで ただ見上げてた
空を飛べれば君とどこまでも
行けるね 何が待ってるのかな
いつだって 大切なものは
無くしてから 気づくから
素直になれれば 伝わるでしょう
雨上がりに架かる虹の下二人
笑えてるかな 今は君とこの道を
ずっとずっと歩いてゆこう

(第8話 挿入歌「翼はないけど」)

こうやって、いつものありふれた日常が、ずっと続いて欲しい。大好きなるんちゃん達とずっと一緒に居たい。

ですが、トオルは知っています。トオルは高校1年生。その1学年上のるんちゃん達は、高校2年生。来年にはそれぞれ高校2年生と3年生になるわけです。3年生になったるんちゃん達は、受験生。

トオルは、学校生活内においては、これまでに2回、るんちゃんとの別れを経験してきました。小学校から中学校に進む時、そして中学校から高校に進む時です。しかしその2回は、もう1年経てばまた同じ学校に通える、という先が約束された別れでもありました。

ですが、やがて訪れるであろう、今度の別れは違います。高校3年生にもなれば、受験が第一で、これまでのように一緒に遊ぶことはできません。高校を卒業する際には、人は皆、それぞれの道を歩み出します。大好きな友達と一緒の学校に通いたい、という動機で進路を選ぶのは、高校までは許されても、その先では許され得るものではありません。住む場所だって遠く離れてしまうかもしれない。

だから、トオルにとって、これまでのような形でるんちゃんと一緒に居られるのは、トオルが高校1年生で、るんちゃんが高校2年生の間の、この1年間がおそらくは最後になるわけです。それを、トオルは知っています。

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それを象徴するのが、第11話「たんじょうび Allow me」の冒頭のこのシークエンス。降る雪、それを見上げるトオル。するとその雪がふっと桜の花びらに変わる。季節のめぐりはあっという間です。それが大切であればこそ、特にそうなのでしょう。

雪が降る情景なのに、やや暖色系のおだやかな背景色が用いられているのが象徴的ですね。トオルの心象風景なのでしょうか。どんなに寒い日でも、るんちゃんさえ居れば心はいつも暖かくなれる、という。

この11話は、ほのぼのが基本の本作においてはしんみりムードが強いエピソードです。誰かが Twitter でこう言っていました。

Aチャンネルを見て涙を流すのは、普通の反応だと思うんだ。

これがよくわかりましたよ、この11話を見ると。

続く最終12話「宇宙人 Anytime」は、3学期の始まり。ここで描かれるのは、しんみりムードだった前話から一転、特別なイベントではない、いつものほのぼのとした日常が描かれます。原作では、2巻の終盤に初詣のエピソードがあって、これが良い〆になっているのですが、このエピソードはこのアニメ版には間に合わなかったようです (※私は未見ですが、初詣エピはOVAの原作として用いられているらしい)。

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ですが、あえて最終話をいつもの日常にしたのは、本作の〆としてとてもふさわしいと思いました。その前の11話があるので、このいつもの、ありふれた日常が、実はとても特別なのだという普遍的なメッセージ性が強く見えてくる感じ。

このようにアニメ版は、わずか1冊と2/3冊分の原作を、独自要素をあまり用いること無くほぼ忠実に再現しつつも、巧みな構成と演出、そして季節感あふれる映像により全12話に見事にまとめてみせてくれました。これは本当に素晴らしいです。

序盤の話は会話のテンポがいまいちぎこちないのが気になったのですが、だんだんと自然になっていきましたね。通してみて振り返ってみると、序盤のぎこちなさからの変化が馴染んでいく人間関係を示していて良いような気にもなってしまいます。

俺的ベストエピは第11話、次点が第8話ですね。

聖地は東京・国立市

Aチャンネルの背景美術のベースとなっている聖地は、東京の国立市および府中市、特に国立市の一橋大学周辺なのだそうです。一橋大学には一度だけ行ったことがあったと思いますが、よく覚えてないですね。ただ、私の通っていた大学がその隣の府中市だったので、風景の雰囲気は似てるように思います。

国立~国分寺~小金井~調布・三鷹にかけては国分寺崖線という地形があって、その周辺は緑も多く気持ちの良い地域です。「ゲゲゲの女房」の舞台なんかもこの周辺ですね。私の東京在住時のアパートは、ちょうど国分寺崖線の坂の途中にありました。

Aチャンネルが描くのはごく普通の日常であり、東京において代表的な、ごく普通の住宅地であるこのエリアがその舞台として選ばれた、ということなのでしょう。

めぐる季節

冒頭のニコニコ動画は、拙編集のAMV/MADです。使っている曲は「めぐる季節」、これは「魔女の宅急便」の主題歌です。ただし、劇中ではボーカルは入っておらず、「海の見える街」という別題のインストゥルメンタル曲として、列車のシーンから街に降り立つまでのシークエンスに用いられています。

この「めぐる季節」と「海の見える街」は、映画に先立って作られたイメージアルバムの中のインストゥルメンタル曲「風の丘」が原曲。楽曲単体で聞くなら、「海の見える街」より「風の丘」が構成の完成度が高く、断然素敵ですよ。この「風の丘」は、本編劇中では使われていませんが、CMに使われていたのが「海の見える街」ではなく「風の丘」だったみたいですね。

「めぐる季節」は、井上あずみさんの歌唱によるボーカル版です。歌詞が好きなんですよね。このボーカル版を知っている人は少ないかもしれませんが、「魔女宅」に限らず、ジブリの楽曲にはボーカル版があるものが多いです。この「めぐる季節」は、セルフカバーによる別バージョンが複数存在しますが、やはりボーカルアルバム収録の一番最初のバージョンが好きです。

今回のAMVに使わせてもらった音源は、『俺専用 初音ミク Vol.1「めぐる季節」』です。素晴らしい調教ですね。伴奏は打ち込みではなく電子ピアノによる生演奏...なのかな?

AMVでは、「めぐる季節」の間奏と、第11話の冒頭シークエンスが完璧にハマりました。雪~桜~るんちゃんに肩を叩かれて振り向くシーンまでは、カット編集によるタイミング合わせは一切やってないです。最後のるんちゃんが振り向いて走っていくシーンだけはカット編集で合わせています。

Category: エンターテインメント

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