2012.06.06

エンターテインメント : 「ぼのぼの」36巻 ~終わりの始まり~

いがらしみきお「ぼのぼの」第36巻が発売されました。そのレビュー (書評、感想) を。ネタバレ気味なのでご注意を。その表紙と裏表紙がこれ。

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キャラは一切描かれておらず、ただ、一本の巨木が描かれています。これは、ぼのぼのの森にある大きな山の山頂に生える巨木「クモモの木」です。初期の頃には存在しなかった木であり、いつから登場しているのかは覚えていませんが、森のどこからでもよく見える、この森を象徴するような木です。その木が、枯れてしまうというのが本巻の最初のお話。表紙の折り返しには、こんな短い詩が書かれています。

木は いつまでも

木は いつまでも
生きていると思っていた

木は いつまでも
そこにあると思っていた

木は いつまでも
生きていると思っていたんだ

「生きている」という言葉が印象的ですね。この詩を読んで連想させられるのは、やはり震災のことです。いがらしみきお先生は東北の方ですし。

このクモモの木が枯れてしまうのは、「火事にあったから」です。その火事とは、劇場用CGアニメ映画「ぼのぼの クモモの木のこと」のこと。あれは本当に良い作品でした。単館上映作品だったのですが、映画の内容も良かったし、何より劇場内の雰囲気がとても良かった。みんなファンなんだなぁ、という感じで、とても和やかな雰囲気でした。

あの火事の後も、すぐには枯れなかったようですが、徐々に弱ってきて、ついには倒れそうになってきてしまった。それでもこの木はきっとまだ生きている。だから、何かをしてあげたい、というのが今回のお話。

そして、森のみんなが木の下に集まり、あることをしようとします。しかしそこで、アライグマくんのお父さんが、言います。「なくなるものは、なくなるのさ」と。そして (中略)「メソメソすんなよ」(後略) と。ド正論であり、ぐっとさせられました。が、その態度はいつもと違って少し自信なさげ。

シマリスくんも、あることをします。それをやって、満足そうな表情がとても印象的でした。

スナドリネコさんは、何もしません。そして、ただ単に...

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続く第2話は、シマリスくんがクノーするお話です。そのクノーとは、年を取り、病弱になった母がついに倒れてしまい、その看病のことです。

献身的な看護を続けるシマリスくんですが、母の病状は良くはなりません。シマリスくんは苦しみます。

そんな中、シマリスくんのお父さんは、シマリスくんに付き添ってもらって花を見に行きます。

年寄りはね

いつも
やってたことは
どうしても
やりたがる
ものさ

そう、このお花見は、毎年の恒例なんです。

「また何度も見に来よう」。そう言うシマリスくんに対し、お父さんはこう返します。

いや

一回で
いいんだよ

「なぜ」...。そのシマリスくんの疑問に対するお父さんのはっきりした答えに、シマリスくんは泣いてしまいました。読んでる俺も泣いてしまいました...。

結局、シマリスくんのお母さんは回復する様子は無く、シマリスくんは、今も看病を続けています。でも、その表情からは苦悩が消え、すっかり晴れやか。あのお父さんの答えは、残酷ではあったものの、何よりの救いだったんですね。

3つ目、この巻の最後のお話は、重かった前の2話と異なり、ほのぼのとしたお話で、とても良い最終回でした。

...いや連載はまだ続いているんですが、1話目・2話目で「死」について考えさせられ、そして最後の3話目では、生きる喜びについてシンプルかつ力強く表現。これが最終巻でも良いぐらいの見事な構成と内容だったと思います。

この36巻は最終巻ではないとはいえ、やはり「終わりの始まり」を強く感じさせられますね。恐らくはあと2~3年ぐらいなのかも。中学時代に知って以来、ずっと読んできた愛読作品ですので、終わってしまうのは寂しいですが、どのように〆てくれるのか楽しみでもあります。

「ぼのぼの」は基本的にどの巻も予備知識無しに楽しめるようになっています。「ぼのぼの」を全く知らなくても大丈夫ですので、興味を持った方は、ぜひこの36巻を手に取ってみて下さい。

その他、お勧めな巻は、思いつく限りでは、

第1巻~第4巻

やっぱり序盤の巻はおさえておきたいところ。特に4巻、ぼのぼのがお父さんの正体について悩むお話が面白すぎます。

第11巻

「木に登る話」が好き。木に登れないぼのぼのが、木登りに挑戦するお話です。結局、ぼのぼのは木登りが出来るようにはならないんですが、木に登ることには成功。アライグマくんのお父さん、良いキャラです。表紙の折り返しより:

なにかできる?

なにかできる
なにかできない
きっとみんな自分にできることを
ず~っと探しているのだろう
自分にできることをみんな
ず~っと探しているとしたら
ボクたちはなんていうか
ごくマジメなんじゃないだろうか

第29巻

「お料理してみようの巻」が見事!

ちがうよ

料理って
気持ちの問題
なのよ

いやー、このシマリスくんの言葉には深く納得。この言葉に至る過程が秀逸です。

第30巻

最初のお話は、シャチの長老さまの大往生のお話。第4巻の続編といったところです。パラパラまんががまた泣かせます。この辺りから、〆に入ってきている感じですね。

第33巻

劇場用作品以外では唯一の「長編」、すなわち、1冊まるまる1つのお話「オリちゃんのこと」です。元々は映画用の企画だったのだとか。表紙が良いですね、最初は何が描いてあるかよくわからないのですが、読み終わるとその意味がわかる仕掛けです。

このお話は、とある冬に発生した事件のお話です。その事件が終わって、また春...

「春だねえ
おとうさん」

「うん

そう

だねえ」


「冬のあとには
必ず春がくる
よね」

「うん

世の中には
なにか
決まった

ことがないと


なにがあっても

絶対変わら
ないことが

ないとね」


「絶対
変わらないこと

じゃあ
(後略)」

「変わっていくこと」を描いた36巻と併せて読むと良いでしょう。

第35巻

「生き物を殺してしまうということについてアライグマくんは見事な解答を示してくれます」、というお話に力強く納得。「これでいいのさ」

ぼのぼの詩画集「みんな思い出なのだろう」

夢をみた
夢をみた
なつかしい夢をみた

ボクは起きたあと
少し無口だった

これは元々はカレンダーで、1989年~1993年の5年分のカレンダーで使われた詩画を1冊の本としてまとめたものです。この引用は、1989年ぼのぼのカレンダー「なにもない日 なにかある日」の10月の部分。

残念ながら今や絶版ですが、ネットでは古本が比較的容易に入手できます。

以上、比較的最近の巻が中心になってしまいましたが、いくつかピックアップしてみました。ぜひ読んでみて下さい。

Category: エンターテインメント

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