2012.08.08

エンターテインメント : 創元推理文庫が読み辛い ~本のデザインの話~

創元推理文庫の越谷オサム「ボーナス・トラック」を買ってみたものの、ページを開くと文字がびっしりでクラクラ来て本を閉じてしまう...という。これはきっと文字が小さすぎるせいで、ラノベに慣れた俺にはキツい。そんな話をTwitterに書いたところ、「いやラノベって実は文字が小さめの傾向だし、創元推理文庫との違いは行数にしてせいぜい1~2行なんでは?」という指摘が。ええー!? そこでちょっと比較を。

まずは、創元推理文庫の越谷オサム「空色メモリ」:

0806_sogen_sorairo_full160.jpg

そしてこちらは電撃文庫の竹宮ゆゆこ「とらドラ!」(1):

0806_dengeki_toradora_full160.jpg

両者の右ページのみを縦に並べて比較:

0806_bunko_cmp.jpg

このスキャン結果では電撃文庫の方がページの横幅が小さいように見えますが、縮尺は同じです。これは電撃文庫の方が紙が厚めであるためか内側がやや固くて開きにくいためで、実際には本の横幅は同じです。

数値上の違いは次の通り:

創元推理文庫電撃文庫
行数18行/頁17行/頁
行送り4.3mm/行4.5mm/行
文字サイズ2.6mm2.7mm
行間1.9mm2.1mm
上余白10.3mm16.1mm
下余白18.4mm13.4mm
右余白10.1mm13.4mm

文字サイズは漢字の横幅。行送りや行間は平均値であり、実際にはルビの有無により各行若干異なっています。測り方によっても違いが出ると思いますので、あくまで参考値と考えて下さい。

なるほど、確かに行数は1行しか違わないですし、文字サイズや行送り・行間も大差ないですな。差の小ささにびっくりです。でも、電撃文庫は抵抗なく読めるのに、創元推理文庫には抵抗を感じるのが不思議。

数値上の大きな違いとしては、右 (ページの外側) の余白が電撃文庫の方がかなり大きい点が特徴的でしょうか。この点、結構印象に寄与してるかも。左 (ページの内側) の余白は計測不可ですが、印象としては両者に違いがあるようには感じません。

そして、この数値には表れない重要な違いがひとつ。漢字の幅に合わせて引いた赤い補助線を参考に両者を比較してみると、電撃文庫では創元推理文庫に比べて、漢字に対する「かな」の大きさがやや小さめに調節してあることが判明。これが読み易さの上で決定的な違いになっているかも。漫画では、漢字はゴシック体で「かな」は明朝体になっていますが、それに通じるものがありますね。

電撃文庫は1993年創刊の新しいレーベルですし、故にデザインの理論的に最新のものが用いられている、ということなんでしょうか。

創元推理文庫は「空色メモリ」の方は既に読んでみましたが、抵抗を感じるのは読み始めるまでの話で、いざ読み始めてしまえば読み辛さはあまり感じませんでした。個人的には電撃文庫の方がずっと読み易いデザインだとは思いますが、創元推理文庫の方もそう悪いものでもないようです。

ですが「ボーナス・トラック」はやっぱりページ開くとちょっとクラクラ。これは文体の違いでしょうね。「空色メモリ」も「ボーナス・トラック」も同じ越谷オサム作ですが、「ボーナス・トラック」の方は1段落が長い傾向 (特に序盤) があり、よってページあたりの改行数が少なく、文字びっしりな印象に繋がってる感じ。

しかし、パッと見て感じた差と、実際に調べてみてわかった差というのはこうも違うもんなんですね。勉強になりました。

Category: エンターテインメント

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