2012.12.05

ギャラリー > 星空CG :
[星ナビ掲載作] 飛翔 (ハイブリッド星景)

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月刊「星ナビ」2013年1月号のギャラリーコーナー掲載作、ハイブリッド星景「飛翔」です。前景のシルエットは実写、背景の星は拙作「星風夜MMD」によるCGです。是非フル解像度版も閲覧してみて下さい、星ナビの掲載サイズでは再現しきれなかったディティールがわかります [ フル解像度版 4000x2667 ]

ちなみに「星ナビ」のギャラリーコーナーって、フォトコンテストではないんです。写真にかぎらず、天文アートなら何でも応募可 なんですよ。今でこそほぼ写真のみですが、創刊当初は素晴らしい手描きイラストを定期投稿してる方がいらっしゃったのを覚えています。確か本格的な3DCGアートもあったような。

星風夜MMDについて

星風夜MMD は、MikuMikuDance というフリーの3DCGソフト上で動く星空レンダリングエンジン (プラネタリウム) です。本格的な天文シミュレーションソフトではないので、現状では月や惑星も無く、単に恒星を描画できるだけですが、描画品質に関しては、少なくとも一般ユーザーが利用できるものとしてはトップクラスだと自負しています。

構図は自由自在 (※ ただし、現状では心射図法のみ) ですし、恒星像も自在にカスタマイズ出来ます。日周運動の軌跡も作れます。今回のような実写風景との合成の他に、イラスト素材としても使えると思います。リアル調イラストはもちろん、調整次第ではアニメ絵に合う星空も作れます。なお、今回は静止画作品ですが、これは動画にも使えるソフトであり、むしろ動画への利用例が多いですね。

より詳しくは、星風夜MMD 解説ページ をご参照下さい。解説動画を含みます。MMDは静止画より動画用という正確が強いですし、動画ならではの演出にもこだわっていますので、ぜひ観てみて下さいね。

また、拙作の他のハイブリッド星景作品は、こちら をご参照下さい。

ハイブリッド星景「飛翔」について

天文アートの新しい可能性を切り開くという思いを込めて「飛翔」と題しました。鳥と少女の銅像から延びる天の川の先には、「わし座」が輝いています。

星ナビギャラリーの評では「拡散系フィルター (ソフトフォーカスフィルター) で撮影した写真のような星像」と評して頂きましたが、この表現は正確とは言えないかもしれません。というのも、今回は弱めの拡散効果の星像を使いましたが、このように弱い拡散効果は、写真では表現が難しい からです。

物理的な拡散フィルターを使えば、もっと強い拡散効果になってしまいますし、特にデジカメの場合は、星像の芯が肥大し過ぎる傾向があります。写真に対しデジタル処理で拡散効果を付加することも出来ますが、しかし高品質な処理はなかなか難しいのです。

CGの星空の場合は、こういった制約からは解き放たれますので、プログラムの実装や星像テクスチャ (※ 素材画像のこと) の作り方次第で、表現者の思うままに、狙い通りの星像を作ることが出来ます。つまり、星像に関しては、CGは実写を超えることができる可能性を秘めているんですよ。そして、星風夜MMD は、プログラム部分もテクスチャも、利用者が自由にカスタマイズ可能です。

一方で、天の川や星雲星団の表現に関してはやはり写真に分があります。星風夜MMDの場合、天の川には、欧州南天天文台 (ESO) による実写の天の川パノラマ画像を、ESO から許可を得た上で利用させて頂いています。ただし、天の川写真とCGで二重に星を描画してしまうとまともな結果は得られないため、天の川の実写画像は、輝星を消去した上でボカし処理を加えることで、星を完全に消しています。なのでどうしても解像感は損なわれています。

CGで描画できる星数をもっと増やせれば良いのですが、残念ながらMMDの場合は、30万星程度が限界のようです。でもこのクオリティなら広角用としては充分かと。

背景の星空CG

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背景の星空は単体ではこんな感じ。星風夜MMDからの出力の素の状態です。10.0等星までで、全天球では約30万星。背景色は漆黒です。最終的な背景色は Photoshop 上で作ってます。星風夜MMDから背景色付きで出力することも可能ですが、Photoshop 上で処理した方が良い部分は Photoshop 上でやってます [ フル解像度 4000x2667 ]

前景の実写写真

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前景のシルエットの素材画像。コンデジで撮影したものだったり。完成作品では、左側を Photoshop 上でコピペして画角を広げました [ フル解像度版 4000x3000 ]

Photoshopファイル

参考までに本作のPSDファイルをアップロードしておきますので、興味のある方はどうぞ。

なお、このPSDファイルはほぼ完成形ですが、完全な完成形ではありません。完成作品では、これをいったんレイヤー統合した後に、ノイズを加えています。若干のノイズを加えることで、実写とCGを馴染ませているんです。写真ではノイズは大敵ですが、CGの場合、無ノイズよりは、若干のノイズを加えたほうが、リアルっぽい印象になると思います。

今後について

正直私はアーティストとしてはあまり高いレベルにあるとは思えません。私の役割は、ソフトウェアや手法を開発して公開し、他のアーティストを支援することだと思っています。

今回の星ナビへの採用は、作品自体の出来が水準レベルには達していたという点に加えて、珍しい試みであるという点が加味された上で採用に繋がったんだと思います。

しかし珍しい試みという点が評価されるのは、最初だけでしょう。今後は、純粋に作品のクオリティでの勝負となります。

私自身も、良い作品が作れれば投稿を続けていきたいですが、他のアーティストのハイブリッド星景やイラスト作品を星ナビ誌上で見ることが出来れば、開発者としては至福の極みです。そうなれば、私自身の作品が載るより嬉しいかもです!

私の望みは、鑑賞に堪え得る描画品質を持つ、本格的な星空CG生成ソフトを誰もが自由に使える形で公開することで、天文アートの分野の可能性を広げることです。言い方を変えると、星空CGを使ったアートに取り組む人が増えて欲しいということですね。

私が本当に作りたいのは、自分自身の作品ではないんです。新しいムーブメントを作ること なんです。他のアーティストさん達にも取り組んで頂いてこそ、私の目標は達成できたことになります。

そして、現状の星風夜MMDの使い勝手の悪さや、表現上の限界は、私の側で改善していくべき課題ですね。MMDを使う以上は限界もありますので、単体動作する本格的なプラネタリウムソフトを世に送り出すことが、最終的な目標になります。

逆ハイブリッド星景なんてどうよ?

別に星側がCGである必要はなくて、逆パターンで、実写の星空と、CGによる他の要素を合成しても良いわけです。つまりは、MMD畑の皆さん、天文系フォトジェミック 作品作って星ナビに応募してみませんか? という話w

フォトジェミック作者の皆さんは、本当に素敵な作品作ってますからね。1本だけ紹介します。背景は静止画なんですが、合成するキャラに若干の3Dカメラワークを加えることで、存在感を格段に増している点が素晴らしい! フルスクリーン&片目で見ることをオススメ! (※ 片目で見ると立体感が格段に増すんですよ!)

イラストも

また、もちろん実写との合成にこだわる必要はなく、フルCGのイラストでも良いですし、CGと手描きの合成も良いでしょう。

天文アートの多様化を!

現状、天文誌上で見られるアマチュアの天文アートって、ほぼ天体写真ばかりじゃないですか。読者コーナーにはイラストも載ってますが、白黒ですし、扱いが小さいという印象が大きい。

でも天文アートは写真だけじゃ無いはずです。例えば素晴らしいCGイラストに取り組んでいる有名プロがいらっしゃいますが、それはプロ限定の世界ではないはず。

これまでは、アマチュアにとっては、高品位な星空CGを出力出来るソフトが無いという壁がありましたが、この壁を取り除くために、私は星風夜MMDを作ったわけです。

これが、天文アートの多様化に繋がるきっかけとなれば、私としては至上の喜びですね。様々なアーティストによる、いろんな形の天文アートが見られるようになることが、私の目標であり望みです。

初音ミクさんは天使ですよ!

初音ミクさんの数多の功績はあまりにも素晴らしく、簡単には言い尽くせないしそもそも知り尽くせ無いし理解し尽くすこともできないのすが、ひとつの理解としては、プロ・アマ問わず誰もが入手可能な音声シンセサイザーが市民権を得たことにより、アマもプロと同じ土俵で音楽制作が出来るようになったことではないでしょうか。

楽曲作ったらPV付けたいよね、という流れで生まれたフリーの3DCGソフトウェア、MikuMikuDance も、この流れの延長線上にあり、従来は使いこなすのが難しい専門的なソフトが必要だった3DCGムービーの世界を、誰もが比較的手軽に楽しめるようにしてくれました。

そして、このMMDの世界では、利用者同士で素材や手法を積極的に公開し合うことにより、より使いやすく、より高度な表現がどんどん可能になっていっています。

拙作「星風夜MMD」は、この流れを天文アートの世界にも、という発想で生まれたものです。ミクさんが居なければ、生まれてなかったかも知れませんね。

初音ミクさんは、本当に天使だと思います。異論は認めない。

Category: 星空CG

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